桐野夏生 ローズガーデン

以前読んだ『天使に見捨てられた夜』と『顔に降りかかる雨』の主人公の自殺した夫の話と言う事で買っただけど、この本は短編集で、表題のローズガーデンは、ミロの夫がインドネシアへ出張しながら、高校時代のミロとの思い出を回想している小説。高校時代の回想と言っても、甘い、青春時代の回想では無く、義理の父親と関係を持っているミロに引かれていくミロの夫のストーリ。
引かれていく理由が、どれだけ凄い事をしているか、常識外れかが、大人の世界として、ミロの夫がミロに引かれていく事が、高校生時代の鬱屈とした思いとして、これもある意味では青春小説なのだろうと思う。高校時代の憂鬱と大人(これは悪い意味での)へ引かれていく姿が。この小説は全く推理小説では無い。恋愛小説と言えるけど、甘い恋愛小説でも無く、上の二冊の小説でのミロの人生の記述が残っていると、高校生時代にこんな出会いをした二人が何故結婚したのか、夫は自殺したのかを考えると、答えの書かれていない連作のミステリーを読んでいる気になるけど。この本に収められた他の小説は『天使に見捨てられた夜』と『顔に降りかかる雨』の番外編と言った短編。女性の私立探偵が新宿を舞台に依頼された調査を行う話。ハードボイルド小説。