最強ヘッジファンド LTCMの興亡

この本を読む前までのLTCMの破綻についての理解は、ノーベル賞の経済学者が、その金融工学理論で投資を行い、莫大な利益を上げていたが、最後は失敗して、FRBが救済したヘッジフャンド。この本を読むまで、色々誤解していた事が分かった。 

LTCMは、アビトラージと言う手法で、あるべき数字(確率的に正規分布)と、その時点の株価とか債券の価格に差異がある事を見つけて、これらの数字が、最終的にはあるべき数字になると考え、その数字に賭ける。コーヒーの上にそそいだミルクは、丸く全体に広がっていく。分子、一個一個の確率論から言うと、分子の広がり方が片方にだけ広がっていく事も可能性としてはあり得るのだけど、現実は決して片方にだけ広がる事は無く、丸く均一に広がっていく様に。
また単純にその有るべき数字に賭けるのでは無くて、その数字になるまでの変化のリスクを、現物と先物とかを組合せてリスクをヘッジしていく。だからヘッジファンドと呼ばれる(名のる?)。
金融工学のイメージより、もっと派手に売買をしていた思っていたのだけど、意外に堅実な投資方法だった。

このLTCMでも、最初に会社に投資した$1が$4になったのがピークであり、最初に投資したお金が何十倍、何百倍になった訳ではない。こう考えると、良く株式で一億円貯めるとか言うのが、難しい、或いはいい加減な内容か分かった。プロの世界でも、最初の$1が$4になったのが破格の実績。

LTCMの最初の年のリターンが40%と言っているが、これは最初の資本金に対してであり、実際はレバレッジを20倍程度かけている為、実際に動かしているお金に対しては、たった1-2%の利益でしかない。更に、オプション取引は、オフ・バランスなので、このバランス・シート上のレバレッジには含まれていない。と言うことは、実際に動かしているお金に対してのリターンで考えると、1-2%より更に下がり、本当に薄利なんだ。

LTCMはボラリテイとかの数字にポジションを取っていた訳で、相場は最終的に正規分布になると言う原理原則を守ってリターンを稼ぐ為に、ボラリィテイとかの相場を作って、これで市場を作ってしてしまう事自体が、アメリカの金融市場の驕りであり、カジノでギャンブルの掛け金を釣り上げていく方法と思う。

LTCMの末期は、これらの数字(指数)についても正規分布であれば、世界が始まってから市場があったとしても確率としては有りえないとして無視していた数字に市場がなって、LTCMは破綻した。

そして最後に、これらの数字でギャンブルをしていたLTMCが潰れれば、逆に張っていた、或いは引き受けてもらっていた米国の各銀行とか投資会社で、莫大な損害が出ると言う事で、FRBが音頭取りをして、各社よりの救済を纏めたと言う事。

結局、今回の金融危機と同じ構造。

LTCMの破綻より10年経ったけど、また同じ事が起きたわけだ。分けの分からない金融商品を作って、これで一儲けして、危なくなれば、だれがどうだけの被害を被るのか分からなくなって、FRBが出てきて救済。

多分、また暫くして、今回の問題が関係者の喉もとを過ぎると、誰かが同じ様な金融商品を作ってバブルになるのだろうな。いくら法律で規制しても、法律の抜け道を考え付くぐらい頭の良い人間が、同じ様に金儲けを考えて、法律の抜け穴を見つけるのだろうし。

最強ヘッジファンドLTCMの興亡 (日経ビジネス人文庫)

最強ヘッジファンドLTCMの興亡 (日経ビジネス人文庫)