村上春樹 1Q84

1Q84 BOOK 2

1Q84 BOOK 2


ストーリーの展開が面白いので、書評とかで紹介される前に読み終えた方が良いと思い、週末に一気に読み終えた。
「世界の終りとワンダーランド」に似ている。 前作の「海辺のカフカ」も、二つの話が並行して書かれているスタイルなので、スタイルだけの話では無いと思うのだけど、何となく、「世界の終りとワンダーランド」の方により共通点がある様に思う。

メインとなるテーマは、リトル・ピープルの話。このリトル・ピープルが出てくる小説は、確か短編集に収録されていた記憶がある。更に、インタビューか何かで、この短編が将来、長編に展開されるかもしれない様な発言を読んだ記憶がある。

このメイン・テーマが寓話的で、また今回の小説の構成が、「小説の中で、深田絵里子が語ってベスト・セラーになった『空気さなぎ』と言う小説の中に登場するリトル・ピープル」が、「1Q84の小説の世界」へ出現するストーリーになっているし、最後も「1Q84」の登場人物の主観で語られているところで終わっていて、はっきりとした結末とか結論が「1Q84」の小説の中で提示されているわけでは無い。この余韻を好むか好まざるかが、村上春樹の作品の好き嫌いを決めると思っているけど。

メインとなるテーマが、リトル・ピープルで、これを料理での主采とすれば、その料理の付け合せが、『猫の街』、『1984』、これと確かボネガットの小説の『宇宙旅行中に遭難した宇宙人が、出発した星への遭難信号を送る為に、地球上に人間を作り出して、その中にDNAと言う救助信号を入れて(まるで海に投げ出されたボトルの中のメッセージの様に)、人間が世代交代をしてもDNAだけは残って、遭難した宇宙人の救助信号を宇宙人の母星へ送る為に、人間は存在する話』。

寓話的なテーマとは別に、小説のディテールを楽しむと登場人物が面白い。 交代に各章で語られる天吾と青葉の設定と、彼らの過去よりの恋愛と、現在の性生活。

深田絵里子が住んでいて、『空気さなぎ』を書いたコミューンは、もともと学生運動から分裂して、急進派は事件を起こして無くなり、穏健派は宗教に変化した(そういえば、このコミューンには経済的、政治的に後盾が有る事が示唆されているが最後でも説明されない。 だから、リトル・ピープルは何かの暗喩だと言う読み方をする人もいるのだろうし、僕も、読んでいる途中までは、こういう展開になるのかなとも思っていた)。

読む人の世代とか経験によって、学生運動に思い入れをする人もいるし、何もなかった時代に思い入れをする人もいるし、宗教の時代に思い入れをする人もいるだろう。

テーマを料理の主采と付け合せと表現したので、これらのディテールは、料理のスパイスの様なものだろう。

だけど、このスパイスが、前作の「海辺のカフカ」が子供向けの味付けだったのに比べて、「1Q84」は、大人向けの味付けに効かせているので、このスパイスだけがマスコミで話題になってしまうのかな?