ノルウェイの森

原作は単行本が出版された時(1987年)に読んで(風の歌を聴けから、僕は出版時に読んでいるので)、それまでの村上春樹の小説の喪失感をストレートに表現しすぎている作品で、この作品からメージャーな流行作家になった事もあり、僕は好きな小説では無かったのだけど、ビデオ化されるのを待たずに映画館へ見に行った。一人で映画館へ映画を見に行ったのは十年ぶり。

原作と映画を比較してみると、直子が入院している場所の風景が僕の原作のイメージとは大きく異なっており、タイトルの「ノルウェイの森」を意識して、こんな森の映像を多用したかもしれない。 それ以外の東京、寮、緑の家、新しく借りたアパートの風景の荒い画面がヌーヴェルヴァーグ的で60年代の薫りが表現されていた。 糸井重里細野晴臣高橋幸宏がちらっと出演しているし。

10 年位前にシンガポールに住んでいた時の中国人の女友達が好きな小説と言っていたので、読み直してこの小説について語った事があったのだけど、この小説のセックスについての描写は死と生(性)を対比させている為に書かれていると思うのに、原作(日本語)では性の表現が描かれすぎていて、中国語の翻訳物を読んだ人は違った感想になっている事に気が付いた。 この映画でもセックスの部分が多いのは、トラン・アン・ユン監督が読んだ翻訳物は中国語以外の翻訳物だったのだろうか。

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)