ヘミングウェイ 移動祝祭日

移動祝祭日 (新潮文庫)

ヘミングウェイの作品は高校生の時の読書感想文の題材として「武器よさらば」を苦労して読んだ事と、夏休みにギリシャへ一人旅した時に「海流のなかの島々」を持っていったのだけど、結局、読まなかったので、どちらかと言うと苦手な作家だった。

昨年の夏休みはスキャナーを購入して、自宅でドイツに住んでいた頃に撮影した昔の写真をスキャンしていて、パリの写真と思い出も書きとめていたが、ヘミングウェイが1920年代にパリ在住時代を回想した本と言う事で購入したものの、今日まで読んでいなかった本。

今日の浜松までの新幹線での移動で読む本が無くて、本棚を探してみたら、この本が見つかったのだけど、一騎に読んでしまった。

まずは、書き出しの

もし幸運にも、若者の頃、パリで 暮らすことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、パリはついてくる。パリは移動祝祭日だからだ。 ある友へ アーネスト・ヘミングウェイ 1950年

で引き込まれて、途中で後書きを読んで、この本が遺作である事が分かり。 最後まで、或いは人生の最後になって、20代を過ごしたパリの日々を回顧した事に共感を覚え、最初の「サン・ミシェル広場の気持のいいカフェ」でヘミングウェイがパリで最初に住んだ場末のアパートと場末のカフェの描写と、場末のアパートに帰らずサン・ミシェル広場のカフェで作品を書く場面と、そこで美人の女性が入ってきて彼女に気が取られる文章で、僕も最初にパリに旅行した時にカルチェラタンの安ホテルに泊まり、あの辺りを歩き回り、夜は人恋しくカフェで日記を書きながら、綺麗な女の人を見ていた記憶が鮮明に蘇ってきた。

そんな個人的な思い出とは別に、1920年代のフランスの印象派の画家達とガートルード・スタイン女史を通しての交流、スコット・フイッツジェラルドとの交流も興味深かった。

スコット・フイッツジェラルドの話が出てきた為か、この本の文章はヘミングウェイよりスコット・フイッツジェラルドっぽいと思ってしまったが、この本は新訳だからかも知れない。