村上春樹のボストン紹介記事


夏休みに入ってマガジンラックの代わりにしている机の片隅で、JALが発行しているAGORAを読まずに溜まっているのを整理しようと思い、整理していたら4月号でボストンの記事があったの。

以前にも、村上春樹がこのAGORAでシアトルの紹介記事を書いていたので、ボストンの紹介であれば村上春樹が書いているかなと思い、送られたままのビニールに入っているAGORAを開封したら、村上春樹の記事だった。

ボストンの紹介記事自体は平凡だったのだけど、冒頭の導入部が良かった。

かつて住民の一人として生活を送った場所を、しばしの歳月を経たあとに旅行者として訪れるのは、なかなか悪くないものだ。そこにはあなたの何年かぶんの人生が、切り取られて保存されている。潮の引いた砂浜についた人つながりの足跡のように、くっきりと。 そこで起こったこと、見聞きしたこと、そのときに流行っていた音楽、吸い込んだ空気、出会った人々、交わされた会話。もちろんいくつかの面白くないこと、かなしいこともあったかもしれない。しかし良きことも、それほど好ましいとはいえないことも、すべては時間というソフトな包装紙にくるまれ、あなたの意識の引き出しの中に、香り袋とおもにしまい込まれている。