Paul Auster, Oracle Night

新潮文庫より文庫版で発売されていたので購入。 

新潮文庫よりの前作の「幻影の書」を読んだ時に、既に、このオラクル・ナイトも単行本で出版されていたので購入しようと思いながら、購入を忘れていた。 柴田元幸氏の書いた文庫版の帯には、「前作の幻影の書が交響曲で、今回のオラクル・ナイトは弦楽四重奏」とのことであるが、クラシック音楽に疎い僕にはよくわからない。だけど、前作の「幻影の署」でポール・オースターが復活した事は理解している。

とは言っても、初期のニューヨーク三部作からリヴァイアサンまでの雰囲気とはちょっと違うのだよな。

主人公の作家が小説を書き始めて、その小説の中で主人公が編集者で未発表の小説が送られてきて、その小説のタイトルが「ミラクル・ナイト」で、と言う構造と、ポール・オースターと小説の主人公と、更にその小説の主人公までは全て一人の分身である構造。 探している相手、観察している相手と主人公が同一化してきて、更に作者のポール・オースターのイメージが重なる事は初期の作品から変わっていないのだけど、なんとなく落ち着いた作品なのは、以前の作品の様に主人公の分身としてアウトローが出てこなくて、主人公の分身が全て社会的には落ち着いたキャラクターだからなのだろう。

単行本では既に新作が3冊発売されているので、今度こそは単行本で購入しよう。 ミステリーとは違い、文庫本になるまでに時間が掛かりそうなので。 

Oracle