技術の事業化を考える時のヒント

http://itpro.nikkeibp.co.jp/a/it/alacarte/iv1207/umeda1.shtml の記事より

Googleが、或いはWEB 2.0 サービス供給会社が)、ユーザーからお金を取らなくてもサービスを運営できる理由は,広告があるからです。広告を配信するインフラをグーグルは持っています。今,全世界の広告産業の規模は,狭い定義でも50兆円,販促やマーケティング費用なども含めれば100兆円の規模です。さらに,ロングテールの部分,つまり,今まで広告を出してこなかった人たちが使うであろうお金がさらに50兆円あるとみています。

 これだけの広告費のうち,ネットの分野に移ってきているのは,まだ全世界で3兆円くらいなのです。150兆円もの額がまるごとネットに移ってくることはないでしょうが,3兆円の10倍,つまり30兆円も原資があれば,全世界の個人が使うITニーズは,すべて受益者非負担で提供できるはずです。米マイクロソフトの売上高は法人向け・個人向けを含めて約5兆円です。それを考えれば,十分な金額でしょう。

広告業界の市場規模が100兆円で、更に50兆円の新規市場があり、これに対し、マイクロソフトの売上が米国のみで5兆円。 したがって広告の仕事で市場規模の何パーセントかの収入を得れば、サービスはただでも採算が合う。 だから受益者非負担のサービスのビジネスモデルが成り立つ。

こういった計算が成り立つのは、広告とWEB 2.0のサービス以外に何かありそうです。

広告の市場規模自体が何か、バブルと言うか、膨れ上がりすぎている気がしますが。

とはいえ,一番面白い技術はネットの世界にあります。かつては,面白い技術の大半がエンタープライズの世界にありました。企業のニーズを満足させるための技術開発に,リーディング・エッジ(先端)があったけれど,それが今はネットの世界に移ろうとしています。

 一つ,面白い例を紹介しましょう。顔を識別する技術を持つライヤ(riya)という会社が米国にあります。

 10年前なら,こうした技術はまず業務への適用を考えたでしょう。例えば,空港のセキュリティ・システムです。テロリストの写真データベースと,カメラの画像を照合させるようなものですね。

 開発費を回収するために,最初は高価なシステムに組み込んで,大企業や政府,自治体に売る。そこで技術を磨き,何年後かには安価なシステムに実装できるようになる。すると,今度は中小企業が使えるようになり,だんだんマーケットが広がる。これは,技術を商用化する古典的なプロセスです。日本のベンダーは相変わらずこのプロセスで新技術を商用化しようとしている。

 ライヤの場合は違います。顔を識別する技術を,ネットで使える無料のアルバム・サービスに適用しました。写真の顔を選択して,「この人はお父さんです」と指定すると,アップした1000枚の写真の中から,お父さんが写っている写真にタグを付けてくれるわけです。顔が横を向いていようが笑っていようが,自動的にタグを付けてくれます。

 面白いものだから,どんどんユーザーが増えて,どんどんアルバムが増えている。ネットはトラフィックさえワッと来れば広告収入でビジネスが成り立つから,商用化のメドも立ちやすい。少人数でやっている会社なら,サイトの人気さえ出てくればすぐに黒字になる。昔だったら考えられないことでしょう。


技術の事業化を考える時のヒント