ポール・オースター インヴィジブル

2009年発刊、日本語訳は2018年

第一章

1967年春に、コロンビア大学2年生のアダム・ウォーカーが一人称でルドルフ・ボルン、マルゴと知り合う話。黒人の少年にホールド・アップに合い、ボルンがナイフで反撃して少年を殺す。

第二章

語り手がいきなりジムと言うアダム・ウォーカーの大学時代の友人でニューヨークのブルックリンに住む小説家になり、第一章の話は30年以上音信不通だったウォーカーから送られてきた小説である事が明かされる。ジムのサンフランシスコでのイベントに合わせて再会する話と、『夏』と言う第一章の小説の続きが送られてくる。その小説ではアダム・ウォーカーの姉のグウィンと過ごした1967年夏の話で近親相姦の話も語られる。

第三章

ジムがオークランドのウォーカーの家へ行くが、ウォーカーは1週間前に亡くなっている。『秋』と言うメモを貰う。『秋』の内容はウォーカーがパリに留学した時の話であるが、ボルン、マルゴとパリで再会し、ボルンの婚約者のエレーヌとその娘のセシルとの出会い。エレーヌへボルンが黒人少年を殺した話をすると、ボルンは怒り、ウォーカーは身に覚えのないドラッグ所持でフランスを追放されニューヨークへ戻る事となる。

第四章

ジムが語り手で始まり、グウィンへの昔の恋心の話と、グウィンとの電話での再会、ウォーカーが書いていた小説の話を出され、コピーをグウィンへ送るが、ウォーカーの小説の中の近親相姦の話は否定される。

2007年にジムはパリへ旅行へ出かける。この前にウォーカーの小説に出てくる、ボルン、マルゴ、エレーヌ、セシルをグーグルで調べる。セシルは文学研究者となってグーグルで情報が出来たので電子メールでコンタクトをしてパリでセシルと会う。

1967年夏の短い期間であったがセシルはウォーカーの事を忘れていなかった。ボルン、マルゴ、エレーヌの話を聞くが、マルゴとエレーヌは亡くなっており、ボルンについてはセシルの日記のメモのコピーをホテルへ届け、それを読んでくれと言う。

その日記の内容がこの本の最後。ボルンはキリアと言う小さな島の山の山頂に屋敷に住んでいて、セシルはボルンを訪れるが、71歳になったボルンの生活、セシルへの対応に不満を持ち、ボルンが二重スパイでエレーヌの夫でセシルの父親の事故を仕組んだ話を示唆し、怒ってボルンの屋敷を離れるところで終わる。この最後は山の麓で50-60人の黒人が石を割っている仕事をしていて、その音をセシルが『一生私とともにある』と書いて終わる。

 

最初はポール・オースターが主人公の1960年代末のコロンビア大学での学生生活を描いた作品かと思ったが、第二章からブルックリンに住むジムが語り手になり、ジムがポール・オースターなのかなと思い始める。

ボルンのミステリアスの雰囲気から初期のニューヨーク三部作を思い出すが、第四章でグーグルを使って小説に出てきた人を探すのが時代だなと思ってしまった。