白石一文 ほかならぬ人へ

この本は単行本では無くて、直木賞の二作が掲載されている「オール読み物」を購入して読んでいた訳なのですが、今回、「オール読み物」の方を購入して正解と思ってしまった。

この小説の全編に流れるのは孤独感で、結局、愛しても、結婚しても、「孤独な人は孤独でしか無い」と言う小説で、小説の書く登場人物に共感したり、反感をおぼえたりするのだろうけど、この月刊誌の直木賞受賞の小説の後に、作者である「白石一文」氏の受賞するまでのエッセイが掲載されているのだけど、白石氏が1997年に家庭を飛び出してから、元妻とも息子ともずーと会っていなくて、息子さんも今年25歳になるのだけど、一度しか会っていない話を読んで、僕は驚愕してしまった。

この小説の「ほかならぬ人へ」は、現代の男女の孤独感を表現していて、よく出来た小説なのだけど、作者の人生の方がもっと小説だなと思ってしまった。 最後に、白石氏はこう書いている、「本当にごめんなさい。でもなにもかも全部、小説のせいなのです」。

この小説の「ほかならぬ人へ」の中にも、どうしようもない登場人物が現れているけど、一番どうしようも無いのは作者の白石氏だろう。 白石氏も、これが判って、このエッセイを書いた事は理解出来るのだけど。

ほかならぬ人へ

ほかならぬ人へ