加藤典洋 「村上春樹 イエローページ3」

幻冬舎文庫の新作コーナーで見つけた本。
こういった本を読んでいると、村上春樹の本の販売当時に、僕がどこに住んでいて、どんな生活とか考え方をしていた時に、発売まもない新刊を買って、読んでいたかと言う記憶も蘇ってきてしまった。
おうむ事件、神戸の大震災の時、僕も海外に住んでいたので、日本での報道とか、人の話を聞いて、ずれと言うか、違和感を感じていたけど、村上春樹は、これらの事件と、その背後に突っ込んでいったんだなあと思ってしまった。
この時期からの作品は、確かに読んでいても、昔の個人主義的な作品から、社会へのメッセージ性へと変化していて、僕の中では、別の作家としてのイメージを持っているので。
初期の村上春樹の作品は感じた事を表現したいと言う、芸術家的な発想の作品だと思っている。 それが、個人の感性とか、感じた事が、個人的な内容より、社会的な内容に変化していって、それについていけるかどうかが昔からの読者の感想なのだけど。
最近、読んだ読売新聞のインタビューで、オウムの浅原彰晃の教義が「悪しき物語」で、これに対して、若者が間違った道に進まないようこれに対して「良い物語」を書いていくことが使命だの様な要約の記事を読んだ記憶があって、変わったなあ、年を取ったのかなと思ってしまったけど。
村上春樹も、もう私生活では表現をしたい事が無くなって、社会的な内容へ変化してきたのかも知れない。 

村上春樹 イエローページ〈3〉 (幻冬舎文庫)

村上春樹 イエローページ〈3〉 (幻冬舎文庫)