沢木耕太郎 旅する力

沢木耕太郎 

旅する力―深夜特急ノート

旅する力―深夜特急ノート


序章    旅を作る
第一章   旅という病
第二章   旅の始まり
第三章   旅を生きる
冬のヨーロッパは凍るように冷たかった。

アジアの旅は巻き込まれる様にして始まっていく。ヨーロッパでは、こちらからから働きかけない限り旅は動かない。旅は巻き込まれるものではなく、自分が動かすもの。自分が作り出さなくてならないものとしてあるのだ。

第四章   旅の行方

「深夜特急」についての僕の個人的な切り口としては、最初に1986年?、第一巻、第二巻が発刊された時は一部の読書好きな人の間でしか話題にならなかった本が、ドイツから日本に帰国した1997年に、普通の若者の間で流行っていた事。
この流行自体は、テレビ化、猿岩石、アジア旅行とかが背景にあるのだけど、根本的には、学生とか若い人達の好み、共通の話題が、1980年代のバブルの頃より変わった事。
バブルの頃の若い人達の主流は、派手にお金を使う事。別に、会社員で無くても、会社員であるより、フリーで仕事をしている人とか、飲食店、バー関係の仕事をしている人の方が金が有ったし、派手に金を使う事で、一種のお祭りの時期だったのだろうな。この時代には、「自分探し」なんて言葉は無かったけど、内省的な話とか、暗い話題は、回りの中で一種のタブーだった。
1997年に日本に帰ってきて、若い人達と話をした時に「自分探し」と言う言葉を聞いて、この「深夜特急」が、90年代後半に流行った事が分かった気がした。 こういった旅行に求めるのは、決して、外部の風景では無くて、「自分自身を変えたい」、「自分自身を知りたい」と言うのが目的だし。